金属熱処理について
日頃より本コンテンツをご利用いただきありがとうございます。
今後、下記サーバに移行していきます。お手数ですがブックマークの変更をお願いいたします。https://kousyou.synology.me
合金(alloy)
1つの金属に他の金属または非金属を加えてつくった材料で、金属としての特性を持つものいう。
合金を作る各元素を成分(component)といい、その成分の割合を組成(composition)という。
合金は比重、磁力などの物理的な方法で、その成分に分離できる機械的混合物とも、成分原子の割合が簡単な整数比をなしている化合物とも異なる。
しかし合金の組織の中に化合物の存在することはある。
2種の成分からできている合金を二元合金、3種の成分からできている合金を三元合金という。 ただし、これらの場合、不純物として存在する程度で合金の性質に大きな影響のない元素は成分としてかぞえない。
金属を融解混和して合金をつくるのに、金属の組み合わによっては合金を作りやすいもの、そうでないものがある。
A、強さ.かたさ
ある金属に他の元素を加えると、引っ張り強さ、かたさなどが増し、のびが減少することが多い。
下図はCu-Sn系合金の機械的性質の変化を示したものである。
磯械的性質の改良をはかることは、合金を使用する大きな目的である。
B、融点
合金をつくると一般に融点が低くなり、特別の場合以外はある温度区間にわたって融解、凝固が行なわれるようになる。
この点は一定温度で融解、凝固が行なわれる純金属と非常に異なる点である。
合金の相
合金の任意の部分を取って他の部分と比べたとき、両方の部分がまったく同じ組成や物質的性質を持っているときその合金は一つの相からできているという。
固溶体
どちらか一方の金属の結晶格子に他の金属の原子が入り込んでいるような固体を固溶体という。
入り込むのが非金属原子であっても固溶体という。 合金では固溶体が相として現れることが多い。
結晶格子の形が同じで格子定数の値が近い2つの金属の間では固溶体ができやすい。
固溶体を作る場合でも固溶する量には一定の限度があり、溶媒金属(母体になる金属)、溶質金属(とけ込む金属)が同じであっても温度によって異なる。
この限度以内では、色々な割合の固溶体を作ることができる。
A.置換型固溶体、B,侵入型固溶体の2種類がある。
いずれも原子の置き換え、侵入により結晶格子にひずみを生じ強さ、電気抵抗などを増すようになる。
結晶格子にひずみを生じると転位の移動に対する抵抗が増すのですべりを生じにくくなり、塑性変形させるのに大きな力が必要になる。
これが合金の強さや硬さの増す原因である。
合金の溶液を徐冷してある温度に達すると、凝固が始まり 液相から固相への変化が行われる。 しかし、純金属のように特定の温度で変化が終わるわけでなく、ある温度区間にわたってしだいに結晶の量を増し、ついに結晶だけになる。
すなわち、この温度区間では融液と結晶とが共存するこ とになる。
凝固が終わって全部が結晶(固相)になったあとでも、常温に至るまでの間に相の変化が行なわれる合金が多い。
この固相での相の変化は、結晶格子における原子の移動によって行なわれるので、温度の変化が速いような場合は相の変化が温度の変化に伴わないでずれを生ずるようになる。
たとえば、ある合金を900°Cから急冷した結果800~700°Cの高温で現れる相の状態が常温で得られるようなことがある。
加熱の場合も同様で、急激 な加熱をすれば温度よりはるかに低い相の状態にとどまっていることがある。
しかし、温度の変化をきわめて徐々に与えるならば、結晶格子の原意の移動 のための時間も十分に与えられ、温度変化と相の変化とが正しく対応した状態 が得られる。 このような状態を平衡状態という。
相が平衡状態にある場合には、その温度で長時間保っていても、外蔀からの 影響がないかぎりその状態に変化を生じない。このような状態を安定な状態と いう。
これに反して、平衡状態にない場合は、常に安定の状態に向かって相の変化が行われようとするので、同一の温度に保っていても相の変化が行なわれる。
このような状態のことを不安定な状態という。
炭素鋼の組織
炭素鋼はFeとCを主成分とする 0.020~2.06%Cの二元合金であるが、その組織、牲質に対してCがきわめて鋭敏である。すなわち、0.1%程度の炭素量の増減が炭素鋼の組織に非常に大きな影響を与える。
下は各種 C%の炭素鋼の組織写真である。
既に述 0.8%C付近を境として組織に大きな相違が認められる。 一般に0.8%C以下の鋼を亜共析鋼、0.8%Cの鋼を共析鋼、0.8%C以上の鋼を過共析鋼とよんでいる。
これらの鋼の組織の違いについてはFe-C系状態図によって説明することができる。
Fe-C系状態図
6.67%Cで金属間化合物の炭化鉄(Fe3C)を作るので状態図のその点に縦軸に平行な線が現れる。
オーステナイト
Fe-C系合金において普通723°C以上の高温度でだけ存在する組織でCを最大2.06%まで固溶でき、やわくかくねばい性質を持っている。
フェライト
α-FeにCを固溶した組織であるが、その固溶量がきわめて少ない(最大0.020%)ので、 普通α-Feそのものと考えてもよい。 やわらかく摩耗には弱いがねばく、展延性に富んでいる常温では強磁性体である。
セメンタイト
Fe-C系合金で6.67%Cのところで生ずるかたくてもろい金属化合物である。 延びがぼとんどなく、普通は板状の割れやすい結晶として存在する。常温ではかなり強い磁牲体であるが加熱して210°~215°Cになると常磁性体に変化する。この磁気変態点 をA0点という。
パーライト
微細なフェライトとセメンタイトが層状に混合した組織で、機械的性質はこの2相の中間的なもので、ねばり強い性質を持っている。
Fe-C系状態図の読み方
鋼の組織を説明するのにもっとも関係の深い部分だけ示したものです。 0.8%Cの共折鋼をオーステナイト区域から徐冷した場合の変化を読みとると次の通りである。
1,Sに達するまではオーステナイト1相のままで冷却する。
2、Sで共折反応を起こしこのオーステナイトが全部パーライトに変化する 。 オーステナイト <-> フェライト+セメンタイト(パーライト) この時のフェライトとセメンタイトの割合は次の通りである。 フェライト/セメンタイト = SK / PS
3、S以下に温度が下がってもパーライトのまま冷却する。
ただし、フェライトの炭素固溶限がごくわずかずつ減少するのでフェライトからCを折出してセメンタイトを増加しつつ常温にいたる。
このような状態図より右のような熱処理の状態が管理される。
1,完全焼きなまし
鋼を軟化し結晶組織を調整すること。あまり高くない温度に加熱しその温度に十分保持し、均一なオーステナイトにしたあと徐令する。通常 焼きなましと言えばこの操作を指す。
2,拡散焼きなまし
鋼中の各種成分元素の偏析を拡散により均質化する
3,軟化焼きなまし
切削性を向上させる目的で右の示された温度域に適当時間保持した後、徐冷する。
4,高温焼きなまし
低炭素鋼に用いるもので結晶粒をある程度粗大化させて被切削性を向上させる。
5,応力除去焼きなまし
材料内部の残留応力を除去する目的で行われる。