ねじ
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ネジの目的は締結用と移動用の2種類に大別される
締結用・・・三角ネジ
移動用・・・(運動伝達用) 角ネジ、台形ネジ、ボールネジ 基本ネジとは構造が大きく違うところもありますので移動用に 関しては別途解説します。
主に上記の様に分けられるが、場合により三角ネジが移動用に、角ネジが移動及び締結を目的に用いられる事もある。
テーパーネジ、配管ネジはこちらへ
ネジの外観
ネジの種類はとても多く 機械でよく使用される物だけをあげてあります。
ネジの原理
右の直角三角形のa.b.c.の紙片を円筒に巻き付け1回転させると三角形の斜辺が円筒に沿ったらせん状になります。 このらせん状に連続して円筒に溝が掘られた物をネジといいます。
ねじれ角
この三角形のθの角度のこと
リード
ネジが一回転して軸方向に進む距離 右で行けば Lの距離
条数
円筒に一筋の溝で巻いていく物を1条ネジ、2溝 一緒に巻いていく物を2条ネジという
ピッチ
となりあうネジ山間の距離をピッチといい、1条ネジはピッチ=リードになる
右ネジ、左ネジ
時計回りに廻すと締まるネジを右ネジ(一般にはこちらがほとんど) 反時計回りに廻すと締まるネジを左ネジ(扇風機の羽根を止めているネジなど特殊な場合)
ネジの各部の名称
ネジの呼びはオネジの外形で呼ぶ、外形が10mmであればM10のネジといい、このMはメートル法のMを示す。
日本では主にメートルネジを使用している。
メートル以外にユニファイネジ(インチネジ)があり記号Uで示し、インチ寸法である為呼びはインチの分数又は整数で示し、これにインチ当たりの山数をハイフォンを用いて記入する。
例)3/8-16UNC 並目ネジはUNC、細目ネジはUNFで示す。
ネジ山の角度は60°山の頂は平で谷部の形状は丸みが付いている。
ネジ山の形状を右に示す。
通常のネジは三角ネジである。 そのほかは特別な用途専用に使用されている。
台形ネジ -> 工作機械の送り(最近は少ない)
角ネジ -> 摩擦抵抗が少ない、加工が面倒(ほとんど使用されない)
ノコ歯ネジ -> 一方向にだけ大きな力が加わるとき(ジャッキなど)
丸ネジ -> 転造品に多い(電球の口金)
ボールネジ -> 移動用
並目ネジと細目ネジ
ー般のボルトに使われているのは主に並目ネジである。 細目ネジは並目ネジに比べてピッチが小さいので強度を必要とする場合、大径の場合、肉の薄い円筒形の場合等に用いられる。
欠点としては、ネジ加工の精度管理をしっかり行わないと逆に強度が並目より低くなってしまうおそれがあります。
たとえば規定値以上の大きな下穴加工をしてしまうと十分な谷が形成されず山が坊主になってしまいます。 また、カジリがでやすいので注意が必要です。
メートルネジの規格表を示します。
ネジのサイズは1欄から極力 選んでください。 それ以外は 通常使用されていません。
細目ねじはピッチを小さく、しネジの長さ全長で接触する面積を多く取ることにより並目ネジより強度を増している。多くのシリンダーのロッド先端ネジが細目を採用している理由です。
並目と細目の強度比較を下記に示します
おねじ長さとめねじ長さの関係は、簡略的にオネジの外形 X 1.2倍以上のめねじ深さを取ります
これはめねじには、通常 口面取りが施されるためネジの有効長さが 減るために安全をみて1.2倍とします。 もちろん メネジの材質にもよります。
1.2はSS400を想定しています。 参考にほかの材質について表を下部に示します。この中の値は口面取りを考慮に入れてありません。
ネジの破壊は右のように二通り発生します。 おねじが破断する場合、これは剪断力(横からの力)がかかった場合も起こります。
もう一方がネジ山が坊主になるケース。
これは多くの場合十分なめねじ長さが無かったときや、下穴が適正でなかった場合、または材質がもろかった場合などに多く起きます。
左のケースのCASE "A"の強度計算は単純でネジの谷径の断面積でかかる力を割ります。
M10のネジの谷の断面積は55.12mmなので最大許容荷重はこの断面積に材料の降伏点荷重をかけて安全率で割ることとなります。
ちなみにネジの安全率は通常 静荷重 3 、 衝撃荷重 12です
従いM10のネジでSS400のネジであれば降伏点は25Kg/mm2ですから 55.12 X 25 / 3 = 459Kg(静荷重) 55.1 X 25 / 12 = 114.8Kg(衝撃荷重)となります。
CASE "B"の場合はやや複雑になります。
下の図に沿って一山あたりの剪断長さを求めます。
AB = (P/2) + (dp - Dc ) tan α / CD = (P/2) + (dc - Dp) tan α とし、 オネジのネジ山が剪断破壊する荷重を
WB 、メネジのネジ山が剪断破壊する荷重をWNとすると WB = πDc . AB . zτb / WN = πdc . CD . zτn で示される。
ここで z は負荷能力があると見なされる山の数、τb, τnはメネジ、オネジそれぞれの断破壊応力である。
断破壊応力は下の引っ張り強さとの比から算出する。
具体的に計算してみましょう。
M10 の有効長さ 10mmとした場合、山数は ピッチ 1.5mmなので 10/1.5で6.6 AB = (P/2) + (dp - Dc ) tan α = (1.5/2)+(9.026-8.376) X tan 30 = 1.1253
SS400の引っ張り強さ 400N/mm2ですから上の表より0.5倍とし約20.4Kgf/mm2とします。
WB = πDc . AB . zτb = π X 8.376 X 1.1253 X 6.66 X 20.4 = 4023Kgf でネジ山が破断します。
それぞれの安全係数は別途 かけます。
増し締め
増し締めというのは上の剪断破壊の山のメネジとオネジの三角山の間に右側に隙があります。 当然これが無ければネジは廻すことができません。 接触すべき側も全山均一に接触すれば良いのですが 機械加工の誤差などによりどうしても多少の隙ができてきます。
ネジを初めて 締めたすぐには この山の接触が不均一で、 あるところは強くあたり 、あるところは隙気味 にあたっているという状態ですが これが時間がたつと強くあたっていた箇所の変形が起こり なじんできます。 これをそのままに放置するとネジのゆるみの原因になるため 半日から1,2日おいた後に 再度、ネジを締め上げる作業を行います。 これを増し締めといいます。
ネジの描き方
ネジは通常 右のように単純化して図示をする。
外形は太線、谷の径を細線で示す。
外形は実際の尺度に合わせて書くが谷の径は厳密に書くと外形線と重なるときも多くありその場合はそれらしく判断が付くところまでずらして作図する。
ネジの境界線は太線で書き、不完全ネジ部は細線とする。
メネジの描き方
内径は太線、谷の径は細線で書く。
平面からみた場合もオネジ、メネジとも太線、細線の使い分けは同じです。
メネジにオネジを挿入した時の製図
オネジを優先して書きます。
下の例では断面で示されていますので製図通則で断面で 軸類(ボルトを含む)は断面してはならないとなっていますので軸(オネジ)の線が優先されます。 (3D CADで断面を作成すると軸も一緒に断面してしまうため後で線を追加する必要があります。)
参考に小ネジの作図も示しておきます。
不完全ネジ部と逃がし
軸にオネジ加工をした場合軸の先端は面取りをします。
必要な長さまでネジ加工をしたあと バイトを逃がします。
そのときにできるのが不完全ネジ部です。
このようなネジは、正確にどこまでメネジが入るかわかりません。 メネジを軸の肩まで当てたい場合は肩の部分に首(逃がし)をつけてからネジ加工をします。
そうすることでメネジは不完全ネジ部が無いため最後まで進むことができ肩にあたり止まります。
基本的なネジの加工方法
まずドリルでした穴をあけ、口面取りをし、その後 タップ加工を行います。
このタップは要求精度により一度に加工していい場合と何回かに分けて仕上げていく場合があります。
級の高いメネジは複数回タップを荒削り、仕上げタップのように使い分けて仕上げます。
タップ加工だけでなく穴加工は可能であれば通し(穴が突き抜ける)加工が望ましい 切り粉の排出の影響によりタップが破損しやすくなり、破損した場合も取り除きやすい
ネジの呼び
通常 ネジの呼びでM10といえばメートル並目の外形10mm 右ネジと判断されます。 後はネジの首下長さ、 ネジ部長さを指定し、ネジの頭の形状を指定してあげればほとんどの場合通用します。
逆にこれ以外の物を追記で書くと言うことは普通のネジではありませんと宣言するにも等しいです
細目ねじは必ずピッチを書きます。細目と書いただけではいけません。 なぜかと言えば同じ外形でも違うピッチが何種類か存在するからです。
並目は外形が決まればピッチは1種類だけなのであえて書く必要はありません。 スパナのサイズは下のB寸法で 呼びます
ボルト刻印の意味
強度区分の初めの文字は引張り強さを表しています。10は100kgf/mm2を示しています。
次の文字の降伏点は引張り強さの何%あるか示したもので、9は90%を示しています。
特殊頭ネジに関しては、ほとんどがネジ専門メーカー(またはミスミなど商社、最近 ミスミさんのカタログをみて全部ミスミで製作していると思っている人が増えているようで、ある意味怖いです)でカタログを出していますので その呼び方で注文することが多いです。
どうしてもそのようなカタログが無くJISの既定にある場合まれにJIS番号で手配する場合もあります。その場合には当然JISの呼び番号で呼びます。
詳しい 呼び 形状 などは 日本工業標準調査会 http://www.jisc.go.jp/app/JPS/JPSO0020.html のデーターベース検索で ネジで検索してください。
座金
座金はボルト、ナットの座面と締め付け部との間に挟む板で使用目的は座面の保護、ネジのゆるみ止めである。
一般によく使用されるのは、平座金とバネ座金である。
バネ座金は、ゆるみ止めを目的としている。
バネ座金に関しては非常に多くの解釈があるようです。
以下あるWEBに掲載されたコメントです。
”締結ボルトは構造的にはそれ自体、バネと認識されています。
ばね座金を使うと、ボルトの堅いバネにフニャフニャのバネを重ねた状態になります。
堅いバネは、軸方向のわずかな変位で、荷重が大きく変化しますが、柔らかいバネは、軸方向に少しぐらい変位しても、荷重が大きく変化しにくい特徴があります。
これにより、部材の伸び縮みなどで緩んだときに、締結力が、完全に無くなるのを防ぎます。これが、ばね座金の機能です。
しかし、高度に振動が予想されるような機械では、締結強度や、部材、ボルトの疲労面から必要な締結力を計算し設定していますので、ばね座金が機能するまで締結力が減少したら疲労破壊につながるわけで、ばね座金があっても何の意味も無いことになります。
これが、ばね座金を使わない理由です。” とあります。
しかし私個人の今までの経験からすると機械にもよりますがボルトの本数は膨大な数に上りなにも廻り止めをしないでおく勇気はありません。
座金がふにゃふにゃと言いますがボルトが緩んだときに一気に緩むことを防止してくれます。
ですから、私は使用推奨派です。
ネジのゆるみ
ネジは必ずゆるむと言う認識を持ってください。
もともと 結合したいのだけれど 永久的に結合してしまうとメンテナンスとか運搬とかのために分解可能とするためにネジが使用されます。
ですから 当然 ゆるまないと目的を達成できません。 しかし 通常の時には緩んでほしくないと言う相反することを要求されています。
上のバネ座金などがその緩み止めの1手段です。 これ以外にも色々な考案がされています。 用途に応じて一番適した物を選択する必要があります。
もっとも確実な方法はワイヤーがけ、またはボルトを溶接することです。
ネジの使用方法
上記 "座金について"で示す図の上側の使用方法を 押さえボルト、 下側を 通しボルトと言い長短所をまとめます。
通しボルト | 押さえボルト | |
長所 | 母材を痛めない | ナット不要 |
加工が安価 | タップ加工が必要 | |
短所 | ナット必要 | 母材を痛めた場合ネジ加工が再度必要 |
ナットを押さえて締める、ゆるめる必要がある。 | スペース上有利 |
ネジの太さの選び方
できる限り 均等に締め付けられて 本数を少なくするのが基本です。 ただし 3本以下にするのは、特別な場合をのぞき 良くありません。 ”ネジは緩む”を忘れないように。
このケースの場合 一本のネジが十分で無いと振動、衝撃などにより1本ずつちぎれて最後にすべてが破損する事故が想定されます。
従い 理想は a の太い4本です。 しかし 流体のふたなどの場合シール材が間にあり均一に押さえたい場合などは b を使用するべきでしょう。
部材の組み方
3枚以上の部材をボルトで締める場合は基本はそれぞれを 別々に締める必要があります。 同時に組んでしまうと 二つに組んだ状態を確認できない。 挟まれた部材に均一な締め付け力が働かないなどの 短所があります。
横方向の荷重に対する考慮
ネジはネジ山による接触圧力により部材を止めているだけなので極論を言うと
上イメージのようにボルトの上に締め付け力と言う重石を載せているにすぎません。 従い横からの力はこの重石で生じた摩擦力分だけが耐えられる力となります。 当然 部材がずれて 穴がボルトに接触した後は このボルトが剪断するまではこの部材はずれなくなります。
しかし それを期待して設計することはできません。
ボルトが均一に 複数本 同時に 剪断荷重を受けられるようには穴加工ができないからです。
このように横荷重が大きくかかる場合は 別途 ピンを施工するか下のように肩当てを作る必要があります。
ネジの締め付け力の計算excelを付けておきます。
ネジの締めつけトルクとメネジの限界長さ
適正な締めつけトルクは、ボルトの材質、メネジの材質、締めつけ工具、潤滑剤の有無などで大きく変わります。
締めつけトルク成分は、ネジ面摩擦40%,ネジリード部10%,座面摩擦40%に分かれます。 下に参考値を掲載します。