体験記
私は、この設計という職業に就くまでは、本当に、自己概念が低かったと思います。 何をやっても続かない、運がない、など前向きになれるようなものは、何もなかったように思います。 しかし、妙に明るいところはありました。
それで、まず、この会社に入って変わったのは、本を読むようになったこと。 ジャンルは問わず、色々な物を読むようになりました。
自慢では無いですが私は、小学校の夏休みの課題の読書感想文を一度も出したことがありません。そのくらい本を読みませんでした。
でも、漫画は大好きでした。 ですから漫画自体は、今でも好きです。 好きですがさすがに、もう、電車の中で大ぴらに見るのは恥ずかしくなりましたし、最近はほとんど見なくなりました。
私は漫画も一つの活字であると思っていますから、漫画を真っ向から」否定するつもりはありません。
むしろテレビより漫画のほうが良いと思っていますし、何も読まないより、はるかに良いと思っています。
本 を読むことは、能動的です。 自ら楽しみたい、何か学びたい、答えを見つけたいと、自ら望んで読むのです。
普通の人の学校での勉強は、ほとんど受動的、テレビ講座など一部を除きほとんどは受動的です。
人間は能動的に何かをした場合、受動的に行っている3倍の能力を発揮するそうです。
設計などのスキルを高めるための書籍も私は、若い頃から買い集めています。
よく初心者向けの本は、書店にいっぱい並んでいて何を買おうか迷うくらいですが、初心者を卒業して、中級者になると、とたんに、説明してくれる本が無くなります。 これはどんなカテゴリーでもおなじだと思います。
そうなると、解るところは、ホンの数ページという本も我慢して買うしかありません。 私はその様な 本の買い方をしました。
それは、本の数ページでも私にはそれだけの価値があると信じたからです。 それで何年間たった後、もう一度、そのころ何が書いてあったのか解らなかったところを見ると、”あ~、そういうことが書いてあったんだ~!”と理解できることも、しばしばありました。
力学の章でも書きましたが、 このような 工学書も自分で、身銭を使って購入したものは、ノートと同じで必ず保管しておきましょう。
6,自ら望んでする事は、3倍の効果がある。
7,本を読む習慣を作る。
私が設計者初級だった頃、よく言われた言葉があります。
”いくらすばらしい、アイデアを持っていても、それを表現できなければ、ただの空想にしかすぎない”
これは実に奥深い言葉だと今でも思います
。 我々は、はじめ新しい物を開発するときには、必ずポンチ図と言うものを、フリーハンドで書きます。
自分の頭の中にあるイメージをとにかく、紙に書き表してみて頭の中のイメージを整理します。
そのポンチ図のでき、不出来でその後の完成度が決まると言っても過言ではありません。 (ダビンチは偉大だと思わずにはいられません。)
ポンチ図でも描きあらわせない物は、ただの空想と言うことです。
頭の中に浮かんだアイデア(立体イメージ)をいかに、紙に書き出せる技術を持っているか?これは端的に製図と言う手法がいかに洗練された手法かと言うことを意味します。
長年、設計業務をしている人は、図面の3面図をみて頭のなかで、立体をイメージします。
8,製図技術は、アイデアを熟成させるもので、単純に3D CAD DATAを補完する物ではなく、重要である。
幾ら設計という仕事を知らなくても、会社に入社し、与えられた業務をすれば、給与がもらえます。
これが実は、私にとっては、すごいことだったのです。 俗によく言う、”プロフェッショナル”です。
お金を頂いて仕事をするいじょう、それはプロフェッショナルです。 新人もベテランも関係ありません。真剣勝負です。
趣味で覚えようとする教育講座とか、まあ、お金をいただけないどんな活動もプロではなく、アマチュアです。これは剣道です。 私はこの真剣の世界でしか物事を理解できない人種だったのです。
このように書くとなにやら格好良いですが、せっぱ詰まらないとやらないと言うことですね。 この真剣の世界で仕事を通じて教えられたことは、本当に水がしみいるように入ってきました。
9,自分を通してお金が動くとき、真剣勝負になり、スキルを習得する絶好のチャンスである。
いままで、どうしても覚えることのできなかったパソコンの言語(プログラム)なども理解できるようになり、自分でも不思議で、”ひょっとしたら、自分はバカじゃないかもしれない”と少しづつ自信が沸いてくるのです。
自分を肯定すること。これは、すごく大事だと思います。 少しづつでも自信がついてくると、自然に自己概念もあがり、今度は欲が出てきます。 すると自己啓発しようかという前向きな考えに変わってきます。
私はこの時期においても、劣等感のかたまりで、自分以外の人は、基礎的なことは、当然身につけているので、その分、自分で色々な知識を身につけなければついていけなくなるという思いがありました。
また、それだけでもなく、色々な目の前に出てくる知識そのものが、目新しく興味をそそったのです。
たとえば、強度計算も、へー~、こんなことで色々な物のたわみが計算できるんだ~、とか、金属にも、こんなに色々と種類があるのかとか、新しいことに出会えることがおもしろかったのです。
ですから日々の業務に持てる力のすべてを使うことはせずに、少しずつですが、自己学習を継続しました。
今でもたまに、昔の本を見ると当時、メモ書きしたことが残っていて、こんなことも勉強したんだーと今では記憶に無い物もたまに見かけます。
ここで、自己学習が重要だと言うことは言うまでもありませんが、それよりも今、もっとも良かったと、思えるのは、自分で人の力を借りず、書物から知識を吸収するためのスキルを身につけたということです。
当然、書物だけでは、解らないところも多く存在するのは事実です。 幾ら泳ぎ方の本を見ても泳げるようにならないのと同じで、設計も本を読んで勉強したからといって設計はできるようにはなりません。
しかし、知識としては身に付くのです。 その知識を実践で試してみる。これは重要です。すごく役に立ちます。自信も沸きます。
10,本を読む習慣が身に付いたら、本から知識を得られるように(ただ読むだけではダメです。腑に落ちるまで理解する)なると、本は一番、身近で安上がりな先生になる。